手の外科(手外科)とは
手外科とは、整形外科の中でも特に、指と手首、腕、肘などを中心に診る診療科です。手外科で診る疾患はたくさんあり、手首や指、肘、腕などに起こる痛みや痺れなど、あらゆる症状・疾患を治療しています。例えば痺れがある場合、末梢神経の異常なのか、それとも頸椎病変なのかを見極めなくてはなりません。手首の症状でお悩みの際は、ぜひ当院までご相談ください。
手外科で対応する主な疾患
手根管症候群
手根管(手首の神経の通り道)で正中神経が圧迫されたり締め付けられたりすることで、痛みや痺れが起こる疾患です。麻痺を起こすこともあります。
中高年の女性や妊娠中の方、手をよく使う仕事をしている方、アスリートなどに多く見られる疾患です。薬物療法や安静などの治療法で治します。薬物療法では、消炎鎮痛薬やビタミンB12剤を処方したり、手根管内に注射したりします。重度になると手術が必要になることもあります。
母指CM関節症
母指CM関節(親指の付け根の関節)の軟骨が擦り減り、変形してしまう関節症です。「物を握る」「フタを開ける」「親指を横に広げる」といった動作をした時に、痛みが起こります。薬物療法と装具療法、関節内注射で治しますが、それらを継続しても治らない場合は、手術が必要になります。
肘部管症候群
尺骨神経と呼ばれる神経が圧迫されることで起こる疾患です。初期では、小指・薬指が痺れたり感覚が鈍くなったりしますが、だんだん手の筋肉が痩せていくと、小指や薬指が変形してしまいます。薬物療法を続けながら治していきますが、麻痺が重くなると改善しにくくなるため、定期的な経過観察が不可欠です。
腱鞘炎
腱鞘炎とは、何らかの理由で腱鞘に炎症が起こってしまう状態です。手や指は、骨と筋肉をつなぐ「腱」が中心となって動いています。腱は部分的に、腱鞘(けんしょう:潤滑性のあるトンネル状の組織)の中を通過します。手や指を動かす時に、腱が浮き上がらないのはこの腱鞘のおかげです。
腱鞘炎の主な症状は、手首や手指などの痛みです。発症原因や部位に応じて「ドケルバン病」「ばね指」などの種類に分かれます。
ドケルバン病
親指のつけ根付近の手首に強い痛みが起こる疾患です。腫れも伴います。
親指を動かすのに必要な腱が通過する、腱鞘が炎症することで発症します。妊娠・出産期または更年期以降の女性、指をよく使う職業やスポーツを行っている方が発症しやすい疾患です。主な治療はとしては、薬物療法と患部へのステロイド注射などが挙げられます。治療を続けても改善できなかったり再発を繰り返したりする場合は、腱鞘を切る手術を選択します。
ばね指(弾撥指)
腱が腱鞘に引っかかることで、指が曲がったまま戻らなくなる疾患です。痛みや腫れなどが起こり、熱を持つこともあります。妊娠期や出産期、更年期以降の女性、指をよく使う仕事や競技を行っている方に多いとされています。
消炎鎮痛剤(軟膏や湿布)の処方や患部へのステロイド注射、超音波などのリハビリテーションで治しますが、これらの治療を継続しても治らない場合は、腱鞘を切る手術を選択します。
へバーデン結節
手指の第一関節(DIP関節)が変形し、曲がったままになる変形性関節症です。40代以降の女性に多い疾患です。症状は一部の指にのみ現れることもありますが、全ての指に生じるケースもあります。曲がり方も一人ひとり異なります。また、手の甲側に水ぶくれみたいな透明の膨らみができることもあります。
薬や装具による固定で治していきますが、日常生活への悪影響が大きい場合や治療の効果が得られなかった場合は、手術を行います。
ガングリオン
手首・指などの関節付近や腱鞘のあるところに、ゼリー状の物質が詰まった腫瘤(しゅりゅう)ができる疾患です。発症原因は不明です。老若男女問わず誰にでも起こり得る疾患ですが、特に女性に多くみられます。
日常生活への影響が少ない場合は放っても問題ありませんが、腫瘤が大きい、痛みがひどい場合は、注射で中身を取り出す必要があります。何度も再発する場合は摘出手術を行いますが、再発する可能性もあります。
マレット変形(槌指=つちゆび)
怪我(突き指など)で、指の第一関節が曲がったままになってしまう状態です。指を伸ばす腱が切れたものを「腱性マレット指」、指の第一関節内の骨折を伴っているものを「骨性マレット指」といいます。曲がった指が槌(ツチ)に見えることから、マレット変形と呼ばれています。治療法ですが、腱性マレット指の場合は、固定具やテーピングなどの装具で指を固定したり、安静による保存療法を行ったりします。骨性マレット指の場合は手術を行います。
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
肘の外側から前腕部にかけて、痛みが起こる状態です。テニスや卓球、バドミントンなどのスポーツをしている方だけでなく、誰でもなる可能性があります。
肘関節の外側にある外側上顆(がいそくじょうか)の炎症が、手首・指を伸ばす筋肉を刺激することで起こります。湿布や軟膏、ステロイド注射などによる薬物療法も行いますが、ストレッチを続けながら手を安静にさせることも必要です。
これらを続けても改善されない場合は、手術を選択します。
野球肘(上腕骨内側上顆炎)
オーバーユース(投球しすぎ)などで発症する、肘の投球障害です。特に、成長期の子供に多く見られます。初期は投球時にのみに痛みが現れますが、進行すると日常生活中でも痛みが起こり、肘が曲げ伸ばししにくくなります。放置するとダメージが大きくなり、関節が変形します。まずは投球を中止し、リハビリやフォーム矯正などで肩や股関節の柔軟性を高める必要があります。重症化すると手術が必要になるため、早期治療が重要です。
TFCC(三角線維軟骨複合体)損傷
TFCCとは、靭帯などを支える組織です。手首関節の橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)を安定させる役割を担っています。外傷などでTFCCにダメージが加わることで、痛みが起こる状態をTFCC損傷と呼びます。特に「手を付く」「手をひねる」などを行うと、手首から小指側に痛みが強く現れます。サポーターなどを装着して治す必要がありますが、それでも治らない場合は関節内注射や手術治療などを検討します。